Accessibility機能の実装へのヒント-SwiftUIについて(エンジニア・中島聡さんよりいただいたアドバイス)

エンジニアの皆さんに視覚障碍者のニーズであるAccessibility対応をお願いするのは、なかなか骨が折れます。
こちらが素人であるが故、どのように伝えればよいか、とっかかりがつかみにくいことが多いです。
つい先日、購読しているメルマガの筆者で、世界的エンジニアの中島聡さんより率直で具体的な御回答をいただきました。
メールマガジンからの転載について、読者からの発信は許諾していただいておりますので、ここに公開させていただきます。
関係されている皆さんへの話題提供になればと願っております。

週刊 Life is Beautiful 2021年4月27日号より一部を転載

受信日時 : 2021年 4月27日(火曜) 7時10分

著者・中島聡様
転載者・三瓶和寿

質問コーナー

次の質問です。(三瓶の質問)
初めまして、自分自身が全盲で、主に視覚障害者向けのIT支援をフリーランスで行っています。
DXに興味を持ち、先日来メルマガを購読し、ご著書3タイトルをkindle本で読ませていただきました。
ユーザーの立場でDXに向き合うことの課題を、視覚障害者や支援者の仲間とともに共有中です。
1. DX対応の社内システムの更新に伴い、今までできていたパソコンでの事務系仕事が、オフィス・リモートともに、難しくなっている事例が増えています。
2. セキュリティー対策としての認証システム(画像認証・パズル認証・スマフォ認証)などで対応に苦慮している事例が増えています。
3. WEBサービスや、スマフォアプリで、スクリーンリーダー対応がされていない事例が多く見受けられます。

これらのことを解決するには、
(ア) エンジニアの養成の際に、アクセシビリティーの観点がきちんと位置付けられること
(イ) ノーコード・ローコードの開発環境が、アクセシビリティー対応になること
(ウ) エンジニアとハンディーを持つユーザーがもっと風通しよく、情報交換できるような技術的なコミュニティーづくりが必要
以上のような問題意識を持っています。

もし、既存のシステムなど、ご紹介いただける情報がありましたらご教示いただけるとありがたいです。

中島さんの回答
アクセシビリティの問題は、開発者目線から言うと、「重要なことは知りつつ、つい後回しにしてしまいがち」な問題です。
実装しなければならない機能がたくさんあり、常に締め切りに追われているような働き方をしていると、「これがなければ出荷できない」機能のプライオリティが下がってしまい、アクセシビリティは、そこに入りがちなのです。

そうなると、やはり開発環境そのものでアクセシビリティをサポートして、出来るだけ自然な形で、実装出来るようにすることが大切だと思います。

良い見本としては、Apple が一昨年導入した SwiftUI のアクセシビリティサポートがあります。
例えば、"Send" というラベルの着いたボタンを表示する場合、
Button(action: {…}, label: { Text("Send")}
とするだけで自動的に、ボタンに "Send" といアクセシビリティラベルが付くのはもちろんのこと、
ボタンに絵文字を表示した場合には、
Button(action: {…}, label: { Text("-> ") }
 .accessibility(label: Text("Send"))
とするだけで、アクセシビリティラベルを置き換えることが可能です。
これぐらい簡単であれば、開発者も、通常の開発のサイクルの中でアクセシビリティを実装することが可能になります。

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